【風には意志がある】ジャンプ台は気まぐれ
風に意思はあると思いますか?
スキージャンプという競技には、風という気象条件が、切っても切り離せない物です。
我々ジャンプ選手は、技術が拮抗している選手同士で戦った場合、自分の最高のパフォーマンスを発揮したら、勝てると言うわけではありません。
他の競技であれば、運要素は非常に少なく、アスリートのこれまでの努力の時間と質で、勝負が決まる事が多いと思います。
では、スキージャンプにおいて何が勝負の鍵になるのか、それは技術でも、努力でも、練習の質でもありません。
風です。
いかに風がスキージャンプにおいて重要な鍵なのか、それを今回はご説明します。
まず、大前提一定レベルの技術は、必要です。ジャンプを始めてすぐの選手が、レジェンドに勝てるわけがありません。
最低条件、アプローチを安定して滑れる、ロスの少ない飛び出しができる、安定した空中姿勢が作れる。
この三つの技術は、最低限必要です。
この三つの条件が揃えば、いい風をもらうだけで、高校生でも社会人の選手に勝つ事ができます。
スキージャンプとは、途方もない実力差があったとしても、風の気分次第で実力差がほぼ0になる競技なんです。
そんな風は地域や国で少し性格が違うように感じます。
大倉山や宮の森の風は気に入ってる選手には、真正面から重たい風を叩きつけてくるような印象です。
本州の風は少し捻くれた性格をしていて追い風を交えながら風が吹きます。
フィンランドの風はとても冷たく軽い風が吹く、少し冷たい性格の様に感じます。
オーストリアは風が弱く、自力で飛んでくださいと、言われている様な風でした。
ヨーロッパの多くのジャンプ台を飛んだわけではないので、一概には言えませんが、これまで飛んできたジャンプ台はそんな印象でした。
僕の感じる風の性格はジャンプ台の形状や、立地、時期や気象状況によって大体想像ができます。
海の見えるジャンプ台は海の海水を吸い上げた湿気の多い風が吹くため、風速の数値以上に選手は風を感じます。
しかし、山間にあるジャンプ台、開けた丘にあるジャンプ台、障害物の少ないジャンプ台は数値よりも軽い風を感じやすいです。
僕は初めて飛ぶジャンプ台で、必ずしているのはジャンプ台の形状把握と風の性格を理解する事をよくしています。
これを怠ると、いい風が吹かず成績にも繋がりません。
風には意志があるそんな普通に思いながら飛んだり、ジャンプ観戦をしていただけると、少し気まぐれな性格のジャンプ台をより愛おしく感じるのではないでしょうか?